農業経営支援

5、農業経営支援

サービスの概要

農業では労働基準法でいくつかの適用除外事項があります。具体的には、労働時間、休憩、休日に係る規制がありません。これは、農業は、農閑期に十分休養を取ることができる等の理由から、法定労働時間等の原則を厳格な罰則をもって適用することは適当でなく、法律で保護する必要がないと考えられているからです。そもそも生き物を扱う仕事である農業は、一般的に労働時間管理そのものが難しいと言えます。

代表的なことでは、1日8時間、週40時間、休日といった法定の規制がなく時間外労働や法定休日に働いた場合も割増賃金を払わなくて良い事になっています。

緑と自然豊かな山梨では果樹栽培を中心とした農業が盛んです。農業は労働時間等の適用を除外や技能実習生など外国人の受入の場合に他の産業と比べて特殊な対応が必要です。

農業労働の特殊性

  1. 所定労働時間に対する留意点
  2. 六次産業化の対応
  3. 農業の労働者に退職金制度は必要か
  4. 外国人技能実習生への対応
  5. 働き方改革への対応
  6. 労災特別加入制度のポイント

他産業と比べた時、以上の特殊性を考慮して各種制度を整備していく事が必要になります。

弊所では農業分野に特化しており、農業の特殊性を踏まえた就業規則作成、人事評価制度や賃金制度等の各種制度設計、労災保険加入等の各種のお手続きも対応いたします。

また個別の支援や労務管理のパッケージサービスを準備してご対応させて頂いております。

所定労働時間に対する留意点

農業では労働時間関係について労働基準法の規制がないので、所定労働時間を自由に設定できます。他産業では、法定労働時間(労働基準法で定める限度時間)である1日8時間、1週40時間を超える所定労働時間を設定することはできません。手続きを踏めば法定労働時間を超えて労働させることはできますが、この場合には法定労働時間を超えて労働させた分については法律で定められた割増賃金を支払わなければなりません。ところが農業では、法定労働時間から大きく逸脱しない範囲で、1日の所定労働時間や1週間の所定労働時間を法定労働時間に縛られることなく自由に設定することが可能だということであり、この労働時間の設定が農業の労務管理の大きなポイントだといえます。

しかし、ここで注意しなければならないのは、農業については労働時間関係が労働基準法の適用除外であるということは、農業は、農閑期に十分休養を取ることができる等の理由から、法定労働時間等の原則を厳格な罰則をもって適用することは適当でなく、法律で保護する必要がないと考えられているからです。したがって、使用者は、労働者に「長時間労働をさせてもよい」などと誤った理解をしないよう留意しなければなりません。所定労働時間を法定労働時間の「週40時間」を基本に設定している事業所が農業の現場でも年々増えています。最近の農業労働は、高度化・通年化など大きく変化してきていますし、他産業を大きく下回るような労働条件で優秀な労働力を確保することは困難なことなどの理由から、所定労働時間や休憩・休日の設定は、できるだけ法定労働時間に近づけるよう努力すべきでしょう

六次産業化への対応

国が六次産業化の市場規模を2020年に10兆円にするという方針を受けて、各地で農業経営の法人化が進んでいる。(2010年度:1兆円 ⇒ 2015年度:5.1兆円)

(1)事業の種類の決定方法

労働保険において事業とは、一定の場所においてある組織のもとに相関連して行われる作業の一体をいい、一定の場所において、一定の組織の下に相関連して行われる作業の一体は、原則として一の事業として取り扱う。

そして、一の事業の「事業の種類」の決定は、主たる業態に基づき「労災保険率適用事業細目表」により決定する。複数の業態が混在し、人事・経理・経営等の業務上の指揮監督を一にしている場合は、売上高、労働者数等で主たる業態を判断する。

六次産業化している農業(加工や販売を行っている農業)の業種の判断基準について、全国47の労働局に電話で聞き取り調査をしたところ、多くの労働局が「六次産業化した農業法人等の業種の判断基準は売上・労働者数で判断する」「総合的に考慮する」「基準はない」という回答であり、六次産業化農業法人向けのパンフレット(「農業法人が加工・販売に取り組む場合の労務管理のポイント」を参考にしていることが分かった。

(2)同一場所で複数の業態が混在するが全てを一括して一の事業場として取り扱う場合

① 主たる業態が農業の場合

同一の場所で複数の業態が混在し、その全てを一括して一の事業場として取り扱う場合で、主たる業態が「農業」と判断される場合は、労働基準法で定める労働時間・休憩・休日に関する規定(労働時間(労基法32条~32条の5)、休憩(34条)、休日(35条)、労働時間、休憩の特例(40条)、時間外・休日労働(33条・36条)、時間外・休日労働の割増賃金(37条)、年少者の特例(60条))が、その事業場で働く労働者全員に適用しない(労働基準法41条)。

② 主たる業態が農業以外

事業の種類が「農業」ではなく、「食料品製造業」や「小売業」等で判断された場合は、労働基準法の労働時間、休憩及び休日にかかわる規定は適用除外ではない。具体的には時間外労働や休日労働に対しては、割増賃金の支払いが義務付けられる。

(3)同一場所で複数の業務が混在するが労働者、労務管理等が明確に区分されている場合

同⼀場所で複数の業務が混在するが、従事労働者、労務管理等が明確に区分されている場合は、⽣産、加⼯、販売を各々独⽴した事業場として取り扱う。⽣産を⾏っている事業場には労働時間等の規定は適⽤されず、加⼯、販売を⾏っている事業場には、労働時間等の規定が適⽤される。

就業規則は、業態ごとに労働条件が異なる場合は業態別に作成する。部門によって始業・就業時間等の労働条件が異なることは致し方ないのですが、次の点に留意すべきである。

イ 所定労働時間は、部門間で大きな差を設けない

ロ 休日数は、全社同一とする

ハ 生産部門の時間外労働についてもできるだけ割増賃金を支給する

イについては、生産部門は原則として法定労働時間に縛られないが、加工・販売部門は法定労働時間を超えて所定労働時間を設定することはできない。

したがって、生産部門においては、変形労働時間制を準用して「繁忙期には法定労働時間を超える日や週はあるが、閑散期には労働時間を減らし、年間(または月)を平均すると法定労働時間である週40時間以内となる」所定労働時間を設定すべきである。

従業員が労働条件において、不満や不公平感を抱くことが多いのが実は休日数なので、ロについては、基本的に全社共通の日数にすべきある。

農業は労働時間関係が適用除外なので、時間外労働や休日労働に対する割増賃金も適用除外だが、従事する仕事によって、残業代の扱いが異なることは、やはり従業員間の不満や不公平感を生じる原因となるので、生産部門についても割増賃金を支給するようにしたほうがよいだろう。

農業の労働者に退職金制度は必要か

国が法人化を推進していることが大きく影響し、農業経営者から法人化に関する質問を受けることが増えている。人事労務関連の中では「法人化すると退職金制度は必要ですか」という質問が多く、人材育成の重要性を理解されている経営者の多くが退職金について悩まれているという実感がある。また、既に法人となっていても退職金制度を用意すべきかどうか悩んでいるケースは多く頻繁に質問を受ける。

実際にどの程度の農業法人が退職金制度を導入しているかというと、過去の農業法人に対するアンケートの調査結果から見ると、退職金制度を用意している農業法人は3割程度と思われる。

例えば、(公社)日本農業法人協会会員に対する平成22年のアンケートで28.8%、平成28年時で32%なので6年で4%程増えたことがわかる。

また、農水省の「農の雇用事業」を利用している経営体で、退職金制度を用意している法人経営体も32%(H28年)である。

退職金の金額の水準については、それがわかる資料が手元になく、正直なところ何とも言えないが、農業法人の多くが中小企業退職金共済制度(以下「中退共」)を利用しているので、中退共に加入されているケースから大まかな予想は可能である。中退共の平均的な掛金は月額5千円から1万円であり、この場合に勤続40年で300万円から600万円程の額となりますので大体この程度かと想像できる。

(5)悪天候で予定作業ができないときは年休扱いにしてよいか

農業法人等の中には悪天候で農作業ができない日は休業とするが、その日は労働者が年休(年次有給休暇)を取得したものとして扱い給与を支給するケースがある。

休暇は、労働者が就労する義務を負う「労働日であることが前提」である。年休を付与するということであれば、労働契約上労働を義務づけられている日に対し使用者は労働者の申出に基づきその日の就労義務を免除し、かつ有給扱いにするということである。休業は、労働者に労働する義務がある日に会社がその労働義務を免除する日のことなので、その日に年休を付与するということは理屈上ありえないので、使用者としては、勝手に年休に振り替えることも出来ないし、また、休業通知の後に労働者から年休の請求があった場合には、年休使用を認める必要はない。

しかしながら、休業手当の場合は、一般的に平均賃金の60%であることから、労働者が年休を請求した場合に使用者が、普段有給消化が進んでいない場合等で、あえて認めようとする場合には、これは差支えないとされている。

なお、労働者の希望によって年休への振替えを認めた場合、使用者はこれとは別に休業手当を支払う必要はない。

外国人技能実習生への対応

技能実習生には、日本人の労働者と同様に、わが国の労働関係法令等が適用され保護されます。また2017 年(平成29 年)11 月から技能実習法が施行され、より一層の技能実習生保護が図られることになりました。実習実施者は、労働関係法令の遵守をはじめとして、雇用関係に基づく適正な賃金の支払いや社会保険等への加入の必要がある。

農業に関しては、労働基準法の労働時間、休憩、休日等に関する規定など、一部項目の適用除外がありますが、他産業並みの労働環境を確保するために、外国人技能実習制度では基本的に労働関係法令等の規定を遵守・準拠します(平成12 年3月農林水産省通知「農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について」、平成25 年3月農林水産省通知「農業分野における技能実習生の労働条件の確保について」)。

労働時間等については他産業に準拠するよう指導されており、1日8時間または週40時間を超えて労働させたときには2割5分増し以上、法定休日に労働させたときには3割5分増し以上の割増賃金を支給しなければならない。

従って就業規則に日本人従業員と技能実習生の労働条件等を分けて記載、技能実習生と個別に労働条件等の雇用契約を書面で締結する事が必要になる。また、農業では、労働基準法の労働時間関係が適用除外であり、36協定の締結や所轄労働基準監督署長への届出は必要がない。ただし、外国人技能実習生に対しては労働時間関係の労働条件について他産業に準拠するよう指導されていることから、外国人技能実習生に時間外労働や休日労働をさせるには事前に「36協定」の締結及び届出を済ますことが必要になる。

36協定に記載する「延長することができる時間」は、外国人技能実習生と結んだ雇用契約書の「所定時間外労働」欄に記載した時間の範囲内となり、「1日」と「1ヶ月」及び「1年」で定めます。なお、協定で定めた時間を超えて労働させることはできませんので注意が必要である

働き方改革への対応

2018年6月29日、参院本議会で「働き方改革関連法案」(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)が可決・成立した。

同法案は、雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法(パート法)、労働契約法、労働者派遣法の労働法の改正を行う法律の通称で「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」「長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」の3つを柱としている。

この中で農業でも就業規則、労使協定を含めて早期での対応が求められているのが、使用者による有給休暇取得の5日付与の義務化(2019年4月~)である。この5日間には計画年休制度により会社が指定して取得した有給休暇、および当該従業員からの請求により消化した有給休暇を除かれる。そのため、就業規則の変更に合わせて、年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定の締結や各従業員に対する年次有給休暇の取得状況の管理等の整備も早急に必要となる。

また、中小企業は2020年4月からの施行になる残業時間の上限規制(大企業:2019年4月)においては外国人技能実習生が対象になる事や、各県によって見解の分かれている41条の適用除外の除外とされる対象作目、作業形態等の場合によっては法改正への対応が必要である。従って農業関係者は労働局や労働基準監督署に相談するなどして早くから対応することが必要になる。

労災特別加入制度のポイント

「特定農作業従事者」は労働者の保護を主な目的としている

第2種特別加入者の「特定農作業従事者」は、平成3年の法改正で新設された。当該制度の新設は、労働者を雇用する農家の多くが暫定任意適用事業であり、そのために労災保険の適用事業所となっていないため、ここで雇用される労働者が保護されていない実態を背景としている。

すなわち、事業主が労災保険特別加入制度を利用する場合は、雇用される労働者の労働保険手続が条件である仕組みを活用し、労働者を雇用している可能性の高い規模の大きな経営体の事業主を労災保険に特別加入させることにより強制適用事業所にし、雇用される労働者が労災保険で保護することを目的の一つとして新設された。

平成3年4月12日付け労働省発労徴第38号基発第259号通達

〈労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行等について〉(一部抜粋)

改正の趣旨

農業の個人事業主については、指定農業機械作業従事者に係る特別加入の制度が設けられている(旧労災則第四六条の一八第一号)が、農業関係者からの要望及び最近における農作業の実態からみて補償対象範囲の拡充を図ることが適当であること、農業関係の特別加入の拡大が図られることにより労働者の保護にもつながること(四四年法附則第一二条第一項第二号)、平成元年一二月二五日の労働者災害補償保険審議会の建議においても同様の観点から農業の特別加入制度の新設について提言がなされたこと等から、対象作業を拡充した特別加入制度を新設することとした。

加入対象事業場

特別加入の対象となるべき者は、労働者に準じて労災保険により保護するに値する者であることが原則であること、また、保険技術上(業務上外の認定等)の観点から、家庭生活と区別できる程度に独立した規模を有する事業場に従事していることが必要である。また、今回の特別加入の新設の目的の一つは、当該特別加入に係る事業に使用される労働者への労災保険の適用拡大にあることから、労働者を使用する可能性の大きい年間農業生産物総販売額三〇〇万円以上又は経営耕地面積二ヘクタール以上の規模の事業場において作業する者(当該事業場に係る農地の所有者又は賃借人及びその共同作業者に限る。)に加入対象を限ることとした。

労働者に係る保険関係成立手続の確保

 特別加入予定者が、当該特別加入に係る事業につき労働者を使用していることが明らかとなった場合は、既に労働者に係る保険関係成立届が提出されている場合を除き、特別加入の申請又は変更届と同時に労働者に係る保険関係成立届を提出させるべきことその他につき、指定農業機械作業従事者と同様である(改正法実施通達の記の三(1)参照)。

農業労災特別加入制度によくみられるトラブル

(1) 労働者に係る保険関係成立手続きを怠っていたケース

JAを通じて10年以上も前から特定農作業従事者に特別加入していた事業主は、8年前からパートタイム労働者を雇用していたが、労働者に係る保険関係成立手続きを怠っていた。このことは、当該事業主がJA主催の労災保険特別加入制度の研修会に参加し「事業主が労災特別加入している暫定任意適用事業は、労災保険の強制適用事業所である」ことを知り明らかになった。

JAの担当者に確認したところ、当該担当者は「農業関係特別加入に加入している事業主がその日以後に労働者を使用する事業となった場合は、労働者を使用した日に労働者に係る保険関係が成立し、その日から10日以内に保険関係成立手続きをしなければならない」という重要事項を知らなかった。そのため、農業労災特別加入制度に加入している組合員にこの重要事項を周知したことはなく、また各々の組合員の雇用実態の確認をしたこともなかった。

労災保険は、国の直営事業など適用除外とされている一部の事業を除いて、労働者を使用するすべての事業を適用事業としているが、農業の労働保険の適用については、個人経営の場合は、労働者が常時5人未満の場合には、例外を除き「暫定任意適用事業」といって、任意加入となっている。ただし、一定の危険又は有害な作業を主として行う事業と事業主が特別加入している事業は強制適用である。

強制適用事業において、労災保険に未加入中に従業員がケガをした場合、基本的には、被災労働者は労災保険で治療を受けることはできる。ただし、事業主が故意または重大な過失により労災保険に係る保険関係成立届の提出を怠っていた期間中に発生した業務災害または通勤災害についてはペナルティがある。

このケースは、労災保険の強制適用事業であるにもかかわらず8年間も労働者にかかわる労災保険の手続きを怠っていたもので、このような状況下で、万一労働者が被災した場合、国から支給された保険給付額の40%が事業主から徴収される可能性もあり、経営が深刻な状況に陥っていた可能性も考えられるもので看過できるものではない。

(2) 労働者を雇用した事業主を農業特別加入から脱退させていたケース

あるJAでは、特定農作業従事者に加入していた事業主が労働者を雇用した際、特定農作業従事者を脱退させ、新たに「中小事業主等」で労災特別加入に加入させていた。

これは全国的に見られる傾向であり、多くが取扱い窓口の誤解によるもので、具体的には特定作業従事者を同じ第2種特別加入制度の「一人親方等の特別加入者」と混同しているケースである。

第2種特別加入者の「特定農作業従事者」は、平成3年の法改正で新設されたが、当該制度の新設は、労働者を雇用する農家の多くが暫定任意適用事業(労働者5人未満の個人事業の農家)であり、そのために労災保険の適用事業所となっていないため、ここで雇用される労働者が保護されていない実態を背景としている。

事業主が労災保険特別加入制度を利用する場合は、雇用される労働者の労働保険手続が条件である仕組みを活用し、労働者を雇用している可能性の高い規模の大きな経営体の事業主を労災保険に特別加入させることにより強制適用事業所にし、雇用される労働者が労災保険で保護されることを目的の一つとして新設されたものである。したがって、労働者を雇用している事業主は当然のことながら加入することができる。

このケースのように、農業関係特別加入(指定農業機械作業従事者においても同様の誤りはある。)の加入者が労働者を雇用した際に制度から脱退させている例は全国的に多々見られる。また、本来なら正しい指導を行うべき所轄労働基準監督署がこのような誤った指導をしているケースもあった。

(※)第2種特別加入者には「一人親方等の特別加入」と「特定作業従事者」がある。一人親方とは、労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする、個人タクシー業者、大工、左官、とび、林業従事者等で、労災特別加入の加入を希望するこれら一人親方が同業者で団体をつくり特別加入することとなる。労働者を使用しないことが条件となっているので、労働者を雇用した場合は脱退し、特別加入を希望する場合は、中小事業主等(第1種特別加入者)に加入することになる。

特定作業従事者とは、特定農作業従事者、指定農業機械作業従事者、国または地方公共団体が実施する訓練従事者、家内労働者及びその補助者、労働組合等の常勤役員、介護作業従事者で「一人親方等」の場合と同様、団体による加入となる。

(3)法人化に伴い農業特別加入を脱退させていたケース

あるJAでは、特定農作業従事者に加入していた事業主が法人化した際、特定農作業従事者を脱退させ、新たに「中小事業主等」で労災特別加入に加入させていた。

このケースは、厚労省のパンフレット「農業者のための特別加入制度について(平成22年3月版)」に、「事業主等は、法人の事業であれば中小事業主等として、個人事業であれば特定農作業従事者、指定農業機械作業従事者、中小事業主等のいずれかを選択して特別加入することができます。」と記載があったことを原因としている。

このパンフレットの記載については、私は、①特定農作業従事者と指定農業機械従事者から法人事業の経営者を排除することに合理的理由がない ②特定農作業従事者や指定農業機械従事者に加入している個人農家が法人化することは、従来より全国的に数多く存在してきたが、経営者を脱退させるという実態は聞いたことがなく、いくつかの労働局に問い合わせてみても「法人の経営者が農業関係特別加入に加入できないなどという話は聞いたことがない。パンフレットの記載は誤りである」というものであった ③労働者を雇用せず家族だけで経営している法人農家の経営者は労災特別加入制度を利用できなくなる ことを理由にパンフレットの記載は明らかに誤り旨、平成23年3月に書面で厚労省に申し入れた。私の申し入れが功を奏したのかどうかは不明だが、この誤った記載は、平成24年3月版パンフレットからは削除された。しかし、一度このような書き物が世に出回ると、これを真に受けて生真面目に誤った対応している窓口は少なからずあると考えられる。

(4) 従事分量配当の農事組合法人等の構成員を「労働者」として扱っているケース

従事分量配当の農事組合法人等の構成員は、労働者としては扱われないので、農業特別加入に加入することになるが、構成員を労働者として扱い、一般労災の対象としているケースがある。

例えばある県では、従事分量配当は実体としては時間給であり、これに基づき構成員の労災保険の扱いも農業労災特別加入ではなく、一般労災で加入しているケースがある。

最近、当該県の農協中央会から問い合わせがあり、「一般労災の加入をしている従事分量配当の農事組合法人の構成員が被災し休業補償の給付請求を行ったところ、労働基準監督署から労働者性が認められない者がいると判断され、労働保険料の2年分の誤納付による還付と、休業給付だけでなく療養給付も認められないこととなった」という事件があった。

(5)農事組合法人の構成員は当該法人における事故しか補償の対象としないケース

具体的には、特別加入の対象となる法人の耕作地のほかに個人が他の作目を耕している場合、この耕作地での作業は補償の対象とならないとしているケースである。労災特別加入制度は、個人が加入し個人の作業中の事故を補償する本来の趣旨に反するものである。

(「特殊加入者に係る業務上外の認定及び支給制度の取扱いについて」(平成3年4月12日 発労微第38号・基発第259号)

農作業場には、特別加入の対象となる事業場のほか、他のほ場等を含み、主として家庭生活に用いる場合を除く。(特定農作業従事者)

他人の圃場等において指定農業機械を用いて行う作業も含むものとする(指定農業機械作業従事者)

(参考)農業経営者等が利用できる労災保険特別加入制度

農作業死亡事故の実態

 

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