事務所通信

新しい資本主義の加速に向けて

「三位一体の労働市場改革」など(骨太の方針2023)

令和5年6月中旬に「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」と「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」が閣議決定されました。中心的な政策方針として「新しい資本主義の加速」が掲げられていますが、その柱といえる「三位一体の労働市場改革」などを確認しておきましょう。

・・・・・・・・・・・・・・骨太の方針2023/新しい資本主義の加速・三位一体の労働市場改革などの概要・・・・・・・・・・・・

<三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」の強化、分厚い中間層の形成など>

三位一体の労働市場改革

〇リ・スキリングによる能力向上支援(5年以内に過半を個人経由での給付等)

〇個々の企業の実態に応じた職務給の導入

〇成長分野への労働移動の円滑化(失業給付制度の見直し、モデル就業規則の改正、退職所得課税制度の見直し等)

という三位一体の労働市場改革を行い、客観性、透明性、公平性が確保される雇用システムへの転換を図ることにより、構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく。

家計所得の増大と分厚い中間層の形成

非正規雇用労働者の処遇改善、最低賃金の引上げ(今年は全国加重平均1,000円の達成を含めて議論、今夏以降1,000円達成後の引上げ方針についても議論等)や地域間格差の是正、適切な価格転嫁・取引適正化、資産運用立国の実現、資産所得倍増プランの実行を行う。

多様な働き方の推進

短時間労働者に対する雇用保険の適用拡大の検討(2028年度までを目途に実施)、働き方改革の一層の推進等を行う。

➔これらにより、物価高に打ち勝つ持続的で構造的な賃上げを実現する

★どのような形で具体化されるのか、動向に注目です。なお、上記の*の「モデル就業規則の改正」は、自己都合退職の場合の退職金の減額といった労働慣行の見直しに向けたモデル就業規則の改正を行おうとするものです。そのほか、もう少し詳しく知りたいということがあれば、気軽にお尋ねください。

標準報酬月額に関する事例集

永年勤続表彰金に関する事例を追加(厚労省)

「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部が改正され、当該事例集に、永年勤続表彰金に関する事例が追加されました。社会保険(健康保険・厚生年金保険)における取扱いを確認しておきましょう。

・・・・・・・・・・・・(健康保険・厚生年金保険の)報酬・賞与の範囲/永年勤続表彰金は含まれるか?・・・・・・・・・・・

<当該事例集‐報酬・賞与の範囲について‐問3>

問 事業主が長期勤続者に対して支給する金銭、金券又は記念品等(以下「永年勤続表彰金」という)は、「報酬等」に含まれるか?

答 永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、その取扱いについては、名称等で判断するのではなく、その内容に基づき判断を行う必要があるが、少なくとも以下の要件(次ページ冒頭に記載)を全て満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しない。ただし、当該要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに「報酬等」と判断するのではなく、事業所に対し、当該永年勤続表彰金の性質について十分確認した上で、総合的に判断すること。

≪永年勤続表彰金における判断要件(すべて満たす場合は「報酬等」に該当しない)≫

① 表彰の目的

企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せて

リフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。

② 表彰の基準

勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。

③ 支給の形態

社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。

長期勤続者に対して支給する金銭、金券又は記念品等」については、労働保険や税制上の取り扱いも、それぞれ定められていますので、それらも合わせて確認しておくとよいかもしれません。必要であれば、気軽にお声掛けください。

障害者雇用促進法等の改正 令和6年4月1日施行分のポイント

障害者雇用促進法と関連政省令が、令和6年4月1日を施行日として改正されることが決まっています。企業実務に影響を及ぼす改正が含まれていますので、確認しておきましょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・障害者雇用促進法等の改正/令和6年4月1日施行分のポイント・・・・・・・・・・・・・・・・・・

障害者雇用率の引き上げ

次のように引き上げられます(一般の民間企業に適用される率・人数のみ紹介)

区 分 改正前 改正後
~令和6年3月 令和6年4月~令和8年6月 令和8年7月~
障害者雇用率 2.3% 2.5% 2.7%
障害者を雇用しなければならない事業主の範囲(常時雇用労働者数が右の人数以上の事業主) 43.5人 40人 37.5人

*当該事業主については、次の①及び②の義務・努力義務が生じます。

① 毎年6月1日時点での障害者雇用状況のハローワークへの報告(義務)

② 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」の選任(努力義務)

週所定労働時間10時間以上20時間未満で働く重度の身体・知的障害者、精神障害者の算定特例

障害特性により長時間の勤務が困難な障害者の方の雇用機会の拡大を図る観点から、特に短い時間(週所定労働時間が10時間以上20時間未満)で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者の方を雇用した場合、特例的な取扱いとして、実雇用率上、1人をもって0.5人と算定することとされます。

㊟ 週10時間以上20時間未満で働く障害者を雇用する事業主に対して支給している特例給付金は、令和6年4月1日をもって廃止となります。

その他

「障害者雇用調整金・報奨金の支給方法の見直し」、「障害者雇用納付金に係る助成金の新設・拡充等」などが行われます。

★たとえば、障害者の雇用義務が1人以上とされる事業主(令和6年4月~令和8年6月の間は、常時雇用労働者数40人以上80人未満の事業主)が、週所定労働時間10時間の精神障害者を2人雇用することとした場合、障害者雇用率を満たすことになります(0.5人×2=1人以上)。改正の詳細については、気軽にお尋ねください。

 

 

 

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